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整形外科

診療方針

整形外科は頭蓋骨を除く骨、関節、これらをつなぐ筋肉や腱などの運動器の疾患を取り扱う診療科ですが、がんセンターでは運動器の疾患のうち腫瘍に特化した診療を行っています。手足(四肢)や胴体の内臓以外の部分の骨や軟部組織(筋肉、脂肪、血管、神経など)に発生した腫瘍(骨・軟部腫瘍)が対象です。骨・軟部腫瘍には良性腫瘍、原発性悪性腫瘍、転移性腫瘍があります。主に原発性悪性腫瘍が当科の診療対象ですが、転移性腫瘍や良性腫瘍も取り扱っています。

骨・軟部腫瘍のうち悪性のものは肉腫と呼ばれます。肉腫は極めて頻度が少なく、骨軟部合わせてもすべての悪性腫瘍の約1%と推定されます。その一方で種類が30種類以上あるため個々の肉腫の頻度はさらに低くなります。がん専門施設でも一施設で一年間に治療される患者は疾患ごとに数人以下にすぎません。

まれな腫瘍であるため、当科では全国規模の共同治療研究に参加し、国際的にも標準とされる治療を行うことを心がけています。現在、骨肉腫、ユーイング肉腫、高悪性度軟部肉腫、横紋筋肉腫については多施設共同研究に参加しています。

 

診療内容

悪性骨腫瘍

骨肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、その他の悪性骨腫瘍

良性骨腫瘍

骨巨細胞腫、骨軟骨腫、内軟骨腫、その他の良性骨腫瘍

成人悪性軟部腫瘍(非円形細胞軟部肉腫)

円形細胞肉腫

良悪性中間軟部腫瘍

良性軟部腫瘍

転移性骨腫瘍

悪性骨腫瘍

 1.骨肉腫

 通常型骨肉腫は10代の思春期に多い代表的な悪性骨腫瘍です。ひざの周囲の大腿骨の下(大腿骨遠位)と脛骨の上(脛骨近位)に約半数が発生し、ついで約15%が肩関節に近い上腕骨の上(上腕骨近位)に発生します。悪性度が高く、効果的な化学療法が導入されるようになった1970年代前半までは生存率は10~15%というものでしたが、その後の化学療法の導入と進歩により現在では70%の治癒が期待できるようになりました。また、以前は切断がほとんどでしたが、2001年以降当科で治療した骨肉腫では、非進行例25例のうち切断は2例でした。他の23例は切断を回避し患肢温存手術を行いました。当科での治療は、診断確定後10週間の術前化学療法を行った後に手術を行い、手術後も20~26週間の化学療法を行います。手術後の化学療法の期間は術前化学療法の効果の良し悪しで変更することがあります。

2.ユーイング肉腫

 ユーイング肉腫も10代を中心に小児から思春期にかけて発生する悪性骨腫瘍で骨肉腫に次いで多いものですが、骨以外の軟部組織に発生することがあります。大腿骨や骨盤に発生することが多いのですが、骨肉腫と違って骨の端ではなく中央に発生しやすい傾向があります。また、肋骨や頭蓋骨など長管骨以外にも発生します。骨肉腫以上に悪性度が高い肉腫ですが、近年の化学療法と局所治療の進歩によって60%以上の治癒が期待できるまでになりました。治療は骨肉腫と同じように術前化学療法をまず行いますが、使用する薬剤が骨肉腫とは異なっています。また、骨肉腫と異なり放射線治療が有効な腫瘍であるため、手術が困難な部位に発生した場合は放射線治療が行われます。また、手術と放射線を組み合わせることもあります。約25%の患者では初診時に転移がありますので、このような場合は通常の化学療法に加えて造血幹細胞移植を併用した大量化学療法を追加して治癒の向上を目指しています。

3.軟骨肉腫

 軟骨肉腫は中年以降に発生する悪性骨腫瘍です。一般に悪性度は低いので手術治療が中心になります。大腿骨、骨盤に多く、上腕骨、肩甲骨、肋骨などにも発生します。大腿骨や上腕骨では広範切除したのち腫瘍用人工関節で再建します。肋骨や肩甲骨では罹患骨の切除のみで必ずしも再建は必要ではありません。骨盤は切除も再建も難しい部位ですが、可能な限り切除し、必要に応じて人工関節を用いて再建を行います。最近は、切除が難しい場所については重粒子線治療を考慮し、適応があれば佐賀県鳥栖市の九州国際重粒子線がん治療センターや兵庫県立粒子線医療センター、千葉県の放射線総合医学研究所重粒子医科学センターに治療を依頼しています。軟骨肉腫の中には脱分化型軟骨肉腫という悪性度の高い腫瘍があります。これに対しては骨肉腫に準じた化学療法を併用することがあります。

4.脊索腫

 脊索腫は仙椎をはじめとする脊椎や頭蓋底に後発する悪性腫瘍です。頻度は極めてまれですが、手術が難しい悪性骨腫瘍の一つでしたが、最近重粒子線治療が有効であることが分かり、積極的に重粒子線治療ができる施設と協力して治療を行っています。

5.その他の悪性骨腫瘍

 その他にも様々な悪性骨腫瘍がありますが、悪性度が高い悪性線維性組織球腫や平滑筋肉腫などに対しては骨肉腫に準じて化学療法と手術を組み合わせた治療を行っています。一方、低悪性度のものは広範切除と必要に応じて再建を行っています。

良性骨腫瘍

1. 骨巨細胞腫

 骨巨細胞腫はもともと良性腫瘍に分類されていますが、治療後の局所再発が多くまれに(約2%)肺転移を生じることもある特異な腫瘍です。治療は手術ですが、悪性腫瘍のように正常組織を含めた広範切除ではなく病巣のみ掻き出す掻爬術が行われます。十分に掻爬した後、エタノールや蒸留水で境界部を処理した後欠損部分には骨セメントやハイドロキシアパタイトの人工骨を充てんします。

2.骨軟骨腫

 成長軟骨が逸脱して発生する良性骨腫瘍です。単発性と遺伝性の多発性のものがあります。また、小児が放射線照射を受けた結果発生する場合もあります。成長が止まると腫瘍の発育も止まりますが、中には大人になって悪性化するものがあります。悪性化すると治療が難しい部位、たとえば骨盤や肋骨、肩甲骨などの骨軟骨腫は機会を見て手術を勧めています。その他の部位では、機能障害や美容上の問題がなければあえて手術は勧めていません。急に痛みが出るといった悪性化を疑わせる症状が出たら精密検査を行い、必要があれば切除しています。

3.内軟骨腫

 手足の指の骨に好発する良性骨腫瘍です。指が太いというような見かけの変化や、腫瘍による骨の脆弱化のために軽微な外傷で骨折して気づかれます。レントゲンで診断がつくことがほとんどです。骨折を繰り返したり、骨が太くなっていることが気になるようであれば手術をします。手術は病巣掻爬と人工骨の充填です。再発は極めてまれです。その他、大腿骨や上腕骨にも発生することがあります。これらの部位でも捻挫や打撲、変形性関節症による痛みがあってたまたまレントゲンを撮って気づかれることがほとんどです。一方、痛みが先行して病気が見つかった場合は、レントゲンで内軟骨腫に似ていても軟骨肉腫のことがありますので、必要なら生検(腫瘍の一部を採取すること)を行って病理診断を行って確定します。内軟骨腫であれば必ずしも手術は必要ないので経過観察を行います。

4.その他の良性骨腫瘍

 頻度の高いものを上に3つ上げましたが、その他にもいろいろな腫瘍があります。軟骨芽細胞腫や類骨骨腫、骨芽細胞腫などは痛みなどの症状があって腫瘍も大きくなっていきますので手術を行います。手術は他の良性骨腫瘍と同じく病巣掻把と人工骨移植(充填)ですが、類骨骨腫は切除のみ行っています。類骨骨腫は、近年、CTを見ながら病巣の中心に針を刺してラジオ波で焼灼する治療法が出てきていますが、当センターでは行っていません。

成人悪性軟部腫瘍(非円形細胞軟部肉腫)

 成人に発生する軟部腫瘍のほとんどは、細胞の形態による分類で非円形細胞肉腫に分類されます。その中には脂肪肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫など亜分類も含めると30種類以上の悪性腫瘍がありますが、悪性度、大きさ、発生部位の深さ(皮下などの体表面に近いものか、筋肉内など筋膜より深いもの)によって予後(生存率など治療結果)が似通ってくるため、個々の疾患名にかかわらず悪性度、大きさ、深さを参考に決められるステージ(病期)別に治療を行います。

 悪性度を3段階に分けることが一般的で、最も低いグレード1では大きさ、深さにかかわらず手術(広範切除術)のみ行っています。中等度悪性のグレード2、高悪性度グレード3の場合、浅いところに発生したものは大きさにかかわらず広範切除のみを行っています。またグレード2、3で深部発生であっても大きさが5センチ以下の場合は広範切除のみです。一方、グレード2や3で深いところに発生した5センチを超える腫瘍やは広範切除に加えて化学療法が可能な方には化学療法を勧めています。

病期分類別治療

ステージ

悪性度

大きさ

深さ

リンパ節転移

遠隔転移

治療

ⅠA

1

≦5センチ

問わず

なし

なし

広範切除

ⅠB

1

>5センチ

問わず

なし

なし

広範切除

ⅡA

2、3

≦5センチ

問わず

なし

なし

広範切除

ⅡB

2

>5センチ

なし

なし

広範切除

2

>5センチ

なし

なし

広範切除+化学療法

3

>5センチ

なし

なし

広範切除

3

>5センチ

なし

なし

広範切除+化学療法

1、2、3

問わず

問わず

あり

なし

広範切除+化学療法

1、2、3

問わず

問わず

問わず

あり

化学療法、その他

 広範切除とは、腫瘍を腫瘍のみ切除するのではなく、腫瘍の周囲の正常組織とともに切除することです。悪性腫瘍を顕微鏡で観察すると腫瘍の周囲組織に浸潤していることが分かります。したがって肉眼的に腫瘍のみを切除すると再発することがほとんどです。したがって局所再発を少なくするためには周囲の正常組織を含めて切除することが必要になります。

 軟部肉腫に対してはイフォスファミドとアドリアマイシンを用いた化学療法を行います。また、臨床試験としてジェムザールとドセタキセルを組み合わせた化学療法との比較試験を行っています。

円形細胞肉腫

 円形細胞肉腫には横紋筋肉腫、骨外性ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍などがあります。いずれも小児に好発します。化学療法や放射線治療によく反応するという特徴があります。これらの腫瘍は小児科と連携して治療します。全身管理と化学療法は小児科が担い、四肢や体幹表面の腫瘍の外科治療は整形外科が担当します。

良悪性中間軟部腫瘍

 良性と悪性の中間に位置する軟部腫瘍があります。基本的に転移することはありませんが、局所再発のリスクが高いものがこれに含まれます。腹壁および腹壁外デスモイド腫瘍、手掌および足底線維腫症、隆起性皮膚線維肉腫などがあります。デスモイド腫瘍や隆起性皮膚線維肉腫は広範切除が推奨されますが、デスモイド腫瘍は必ずしも広範切除ができない場合があり、しばしば再発を来します。デスモイドの再発に対しては手術を行う場合と薬物治療を行う場合があります。ただし薬物治療に関してはまだ確立したものはありません。

良性軟部腫瘍

 良性軟部腫瘍にもたくさんの種類がありますが、頻度が高いものは、脂肪腫、神経鞘腫、血管腫、腱鞘巨細胞腫などです。良性腫瘍の多くは放置してもかまいません。手術をお勧めする腫瘍は腱鞘巨細胞腫です。これは指に好発する腫瘍ですが、徐々に大きくなって関節や骨を侵食しますので摘出手術を行っています。脂肪腫や神経鞘腫、血管腫などは見かけの問題や痛みなどの症状がなければ基本的に経過を見ています。

転移性骨腫瘍

 癌が骨に転移したもので、癌の状況としては進行したステージⅣになります。がんが骨に転移すると骨の強度が下がって痛みや骨折の原因となりQOL(生活の質)が著しく低下することにもなります。脊椎(背骨)、特に胸椎や頸椎に転移すると、脊髄を圧迫して麻痺に至ることも少なくありません。また、大腿骨などが転移で骨折すると歩行ができなくなります。したがって癌そのものの治療に加えて転移した骨に対する治療も必要になります。整形外科では手術が必要な骨転移に対して治療を行っています。脊椎転移で麻痺が危惧される場合、実際に麻痺がおこってすぐの場合にはできるだけ早期に脊髄の圧迫を取り除く手術を行います。この時弱った脊椎を補強するための金具を入れることもしばしばです。大腿骨や上腕骨などでは骨折が起こった場合や、骨折する危険性が高い場合(切迫骨折)には金属を用いて骨をつないだり、転移した部分を切除して人工関節で再建したりしています。

診療実績

疾患別の症例数(2002年~2015年)

悪性骨腫瘍

 

症例数

非進行例

進行例

非進行例の5年生存率(%)

10年生存率

骨肉腫

31

25

6

72.6

72.6

ユーイング肉腫

17

12

5

81.8

68.2

軟骨肉腫

11

10

1

90.9

75.8

平滑筋肉腫/
悪性線維性組織球腫

6

4

2

50.0

50.0

その他

8

4

4

100.0

100.0

悪性軟部腫瘍

 

症例数

非進行例

進行例

非進行例の5年生存率(%)

粘液線維肉腫/
未分化多形型肉腫

44

32

12

78

脂肪肉腫

27

18

7

 

粘液型

20

13

5

100

脱分化型

4

3

1

33

多形型

3

2

1

50

平滑筋肉腫

28

15

13

76

悪性末梢神経鞘腫瘍

15

11

4

73

滑膜肉腫

11

7

4

100

類上皮肉腫

8

7

0

86(10年 64%)

骨外性ユーイング肉腫

10

4

6

75

明細胞肉腫

4

2

2

100

胞巣状軟部肉腫

3

0

3

33(進行例)

その他

10

5

5

80

 

手術実績

部位別手術実績(2002年~2015年)

原発性悪性骨腫瘍

部位

手術数

患肢温存

切断

人工骨関節による再建

自家骨移植による再建

大腿骨

21

16

3

2

脛骨

11

8

3

0

上腕骨

2

2

0

0

骨盤

10

7

1

2

肋骨

5

     

その他

6

(腓骨 2、肩甲骨 1、指骨 2)

転移性骨腫瘍

部位

手術数

術式

大腿骨

46

人工関節 20、骨接合術 26

脊椎

21

椎弓切除+後方固定

上腕骨

11

人工関節 4、骨接合術 7

その他

3

 

軟部悪性腫瘍

部位

手術数

患肢温存

切断

大腿

70

69

1

殿部、鼠蹊部

34

34

0

下腿、膝

25

24

1

上腕、肩

26

26

0

前腕、肘

15

13

2

3

3

0

7

6

1

頚部、胸・腹壁

16    

後腹膜

5    

担当医表

*診療科責任者
   
午前 初診 <休診日>  横山 良平 * <休診日>  <休診日>  横山 良平 *
再診
受付時間 8時30分~11時
外来診察室 整形外科 (Jブロック)
初診(初めて)の方 代表番号 TEL 092-541-3231
再診(再来)の方 予約センター TEL 092-541-3262
※受診の際は、上記にお電話で診療予約をして頂いた上でご来院お願い申し上げます。
また、受診に関するお問い合わせについても上記にご連絡をお願いいたします。
※医師の学会出張や業務の都合による急な休診・代診が発生する場合がございます。
※初診時は絶食不要です。来院後は基本的に水分(水やお茶)のみ摂取可としていますが、食事をとりたい場合には必ずスタッフに確認をお願いいたします。

スタッフ紹介

整形外科 医長

横山 良平

Ryohei Yokoyama

整形外科

整形外科、骨・軟部腫瘍

整形外科 医師

松下 優

Yu Matsushita

整形外科

整形外科一般

整形外科 医師

堀田 忠裕

Tadahiro Hotta

整形外科

-

Ryohei Yokoyama

整形外科 医長

横山 良平

Ryohei Yokoyama

所属診療科
整形外科
出身大学
九州大学(昭和56年)
専門分野

整形外科、骨・軟部腫瘍

資格および活動

資格
日本整形外科学会(専門医)
日本がん治療認定医機構(暫定教育医)

Yu Matsushita

整形外科 医師

松下 優

Yu Matsushita

所属診療科
整形外科
出身大学
佐賀大学(平成23年)
専門分野

整形外科一般

資格および活動

資格
日本整形外科学会(専門医)

 

活動
日本整形外科学会会員
西日本整形・災害外科学会会員

Tadahiro Hotta

整形外科 医師

堀田 忠裕

Tadahiro Hotta

所属診療科
整形外科
出身大学
九州大学(平成23年)
専門分野

-

資格および活動

-